National Art Center, Tokyo × Musée du Louvre

ルーヴル美術館展
ルネサンス

初心者向け・鑑賞ガイド。「有名作を見る」だけでなく、旅・技法・古代・肖像という4つの変化を追うと、最後のレオナルドがぐっと面白く見えてきます。

会期 2026.9.9–12.13国立新美術館 企画展示室1E出品 No.1–56最大の注目作:レオナルド《女性の肖像》

最初にこれだけ知れば十分

作品名や年号を暗記する必要はありません。展覧会全体を「人・もの・技術・イメージが動いた時代」と捉えると、知らない作家の作品も楽しめます。

01
おすすめの見方:「レオナルドを見るために56点を通過する」のではなく、56点でルネサンスの変化を体験したあと、最後にレオナルドを見る。
🧭
旅

何が移動した?

芸術家、外交使節、動物の情報、版画、技術。国境を越えた移動が新しい表現を生みます。

🛠️
技法

何で作られた?

油彩、木版、エマイユ、施釉テラコッタ。主題より先に素材を見ると作品の個性が立ち上がります。

🏛️
古代

昔をどう作り替えた?

ギリシャ・ローマをそのまま復元するのではなく、自分たちの時代に合わせて再編集しました。

👁️
肖像

この人はどう見える?

横顔の「記号」から、視線や身体の動きで内面を想像させる肖像へ。最後の章で変化が実感できます。

4章を「4つの質問」で歩く

会場では、各章でひとつだけ質問を持っておくと、解説を全部読まなくても展覧会の意図を見失いません。

02
I 旅

「どこから、どこへ?」

ヴェネツィアとダマスクス、インドからヨーロッパへ来たサイ、クレタ生まれでスペインへ渡ったエル・グレコ。移動そのものが作品の背景です。

II 技法の革新と洗練

「なぜ、この素材?」

絵画だけでなく、光沢、硬さ、焼成、複製性まで見る章。作品の意味は主題だけでなく、素材と技術にも宿ります。

III 古代へのまなざし

「何を古代から借りた?」

神話、裸身、胸像、メダル、皇帝風の横顔など。古代は「正解集」ではなく、現代向けに再編集する素材集でした。

IV 肖像芸術の隆盛

「この人の性格まで感じる?」

横顔 → 四分の三正面 → 身体・頭・視線のずれ。肖像が身分の表示から心理的な存在感へ広がるのを比較します。

所要時間別・おすすめ鑑賞ルート

公式PDFでは章の順路は示されていますが、各作品の厳密な壁面位置は示されていません。作品番号順に逆行せず、I → II → III → IVと進み、目当てを見つけたら立ち止まるのが効率的です。

03
30分
No.4 → 20 → 34 → 49 → 52 → 56
展覧会の骨格だけつかむ最短コース。最後の肖像3連続に時間を残し、No.56には最低5分。
60分
No.1 → 4 → 6 / 13 → 20 / 31 → 34 → 39 / 42 → 49 → 52 → 56
絵画・版画・工芸・彫刻をバランス良く見る標準コース。
90分
代表14点をすべて
遠くから30秒 → 近づく → ラベル → もう一度離れる、を繰り返し、最後に気になった1点へ戻る余裕を残します。

初心者向け・代表14作品

「有名かどうか」ではなく、4章・地域・素材の違いを比較しやすい作品を選定。カードの「ここを見る」と「自分への問い」だけ拾っても楽しめます。

04
01
旅

《ヴェネツィア共和国の使節団を迎えるダマスクス総督》

ヴェネツィアの画家(匿名)|1511年頃|油彩・カンヴァス
ここを見る:人物を一人ずつではなく、集団の配置・衣服・頭飾り・建築から「誰が客で、誰が迎える側か」を探す。
問い:画面の中で一番権力がありそうなのは誰? なぜそう見える?
04
旅

《サイ》

アルブレヒト・デューラー|1515年|木版
ここを見る:「サイらしい部分」と「鎧・怪獣のような部分」を分けて見る。デューラーは実物を見ず、伝聞・素描から制作しました。
問い:写真がない時代、この版画を見た人はどこまで“事実”だと思っただろう?
06
旅

《アントニオ・デ・コバルビアス・イ・レイバの肖像》

エル・グレコ|1597–1600年頃|油彩・カンヴァス
ここを見る:背景より顔。額・頬・鼻・ひげが明暗と筆触で浮かぶ感じに注目。
問い:この人は社交的? 思索的? そう感じる根拠はどこ?
13
技法

丸皿《大地と海》

ピエール・クルテイス|1568年|銅に彩色エマイユ
ここを見る:正面だけで終わらず、中心 → 大地 → 海 → 縁 → 裏面へ。金属の上のガラス質の光沢もポイント。
問い:なぜ、見えにくい裏側までこれほど装飾したのだろう?
17
技法

小像《身づくろいする女性》

バルテルミー・プリウール(PDF表記)|1585–1600年|鍍金ブロンズ
ここを見る:高さ約7.6cmという小ささ。姿勢、手足、金色の表面に動く光をゆっくり追う。
問い:小ささは弱点? それとも作品の魅力そのもの?
20
技法

《幼子イエスを礼拝する聖母》

アンドレア・デッラ・ロッビアと工房|1480–1490年頃|施釉テラコッタ
ここを見る:「彫刻=石かブロンズ」という先入観を外し、土・立体・釉薬・色彩がどう共存するかを見る。
問い:これは彫刻として見る? 絵画として見る?
31
古代

《5人の天使に囲まれる聖母子》

サンドロ・ボッティチェリ|1470年頃|テンペラ・ポプラ材
ここを見る:中央だけでなく5人の天使の顔 → 手 → 衣の輪郭へ目を移し、線が画面を循環する感覚を追う。
問い:5人は別々の人物? それとも一つの“合唱”のように見える?
32
古代

《豊穣》または《ケレス》

ラファエロ/ジュリオ・ロマーノ(PDF表記)|1517–1519年頃|油彩・板、グリザイユ
ここを見る:平らな板絵なのに、彫刻のように見える理由を明暗から探す。「絵具で彫る」感覚。
問い:なぜ色を使えるのに、あえて単色にした?
34
古代

《三美神》

ルーカス・クラーナハ(父)|1531年|油彩・板
ここを見る:三人のポーズ・顔の向き・輪郭線を比較。古代主題をドイツの画家が自分の美意識に作り替えています。
問い:三人は同じ“美”の反復? それとも性格の違う三人?
39
肖像

メダル《チェチリア・ゴンザーガ/若い娘と一角獣》

ピサネッロ原作に基づく|1447年|ブロンズ
ここを見る:必ず表と裏を一つの物語として見る。表=「誰か」、裏=「どんな徳・イメージで記憶してほしいか」。
問い:顔だけでは伝えられず、一角獣で補った情報は何?
42
肖像

《ミケランジェロの肖像》

バッチョ・バンディネッリに帰属|1522年頃|油彩・ポプラ材
ここを見る:白い被り物、四分の三正面、やや端に寄る身体。英雄ではなく「働く一人の人間」の顔として見る。
問い:知らずに見ても“天才芸術家”に見える?
49
肖像

《フランソワ1世の肖像》

ティツィアーノ|1538年頃|油彩・カンヴァス
ここを見る:横顔・姿勢・衣服・画面サイズで「王らしさ」がどう作られるか。作者は王本人を実見していません。
問い:会ったことのない人を“似せて”描ける? 何を資料にする?
52
肖像

《ベアトリーチェ・デステ》

ジャン・クリストフォロ・ロマーノ|1490–1491年頃|大理石
ここを見る:髪・衣服・輪郭を硬い石からどう作ったかを観察し、No.56と比較。石と油彩で「似ている」の基準は同じ?
問い:この胸像とNo.56、同一人物説に賛成? 反対?
56
肖像

レオナルド・ダ・ヴィンチ《女性の肖像》
通称《美しきフェロニエール》

1490–1497年頃|油彩・クルミ材|日本初公開
ここを見る:①目 ②身体と頭の向きのずれ ③暗い背景 ④手前の欄干。静止画なのに「今まさに振り向いた途中」のような時間が生まれます。
問い:彼女はあなたを見ている? それとも、あなたの横の誰か?

これだけは比較したい「肖像4連続」

本展で一番“ルネサンスの変化”を体感しやすい比較です。人物を残す方法が、記号から心理へ広がっていくように見えます。

05
No.39
メダルの横顔
「誰か」を象徴化して残す
→
No.49
王の横顔
権威と存在感を拡大する
→
No.52
大理石胸像
身体の量感を立体で残す
→
No.56
視線と身体のずれ
「今この瞬間」の心理を感じさせる

初心者向け「5ステップ鑑賞法」

解説を先に全部読むと“正解探し”になりがち。まず自分の目で発見し、その後で解説と照合します。

06

30秒、何も読まずに見る

最初に目が行く場所、明るい/暗い、大きい/小さい、動きがある/静か、だけでOK。

題名と素材だけ読む

誰が描いたかより「木?紙?石?金属?」を先に確認すると、その作品の作り方が見えてきます。

細部を一つだけ選ぶ

目、手、衣服、髪、動物、背景、表面の光。1点に絞ると集中しやすくなります。

自分に一問だけ投げる

「なぜこの向き?」「なぜこの素材?」「この人は何を考えていそう?」など、答えのない問いで十分。

最後に解説を読む

自分の発見と美術史上の説明が一致するか、ずれるかを楽しみます。

最小限の用語集

全部覚える必要はありません。会場で出会った時に意味が分かれば十分です。

07
ルネサンス古代ギリシャ・ローマを学び直し、人間・自然・技術への関心を新しく展開した文化運動。
人文主義(ヒューマニズム)古典を学び、人間の能力・行為・教育を重視する知的文化。
一点透視遠近法奥行き方向の線を一つの消失点へ集め、平面に合理的な空間を作る方法。
油彩油を媒材にする絵具。透明層、濃淡、豊かな色、細密描写に向きます。
テンペラ油彩以前のイタリア板絵で広く使われた水溶性系の絵画技法。
木版画木の版を彫って紙へ刷る複製技術。情報やイメージを広域流通させました。
グリザイユ灰色系中心で描き、石彫・浮彫のように見せる単色画。
彩色エマイユ金属上に色のあるガラス質層を焼き付ける工芸。硬質な光沢が特徴。
施釉テラコッタ焼いた土を釉薬で覆う彫刻技法。立体に陶磁器のような色と光沢を加えます。

当日の実用情報

現地の最終ルールは入口・展示室内の表示を優先してください。

08
📷 写真撮影

本展固有の一律ルールは公式作品リスト等から確認できません。企画展ごとに異なるため、入口・作品ごとのピクトグラムを確認。撮影可でも一脚・三脚は不可。

✏️ メモ

展示室内では鉛筆でのメモが認められています。模写は不可。おすすめメモは「作品No./最初の3語/気づいた細部/疑問1つ」。

🧥 服装

作品保護のため展示室は温湿度管理されています。外気より涼しく感じる場合があるので、薄い羽織物があると安心。

家族・子どもとなら:「動物探し」「顔の向きゲーム」「素材当てゲーム」にすると、美術史の説明なしでも楽しめます。No.4のサイ、No.13の多様な動物、No.39の一角獣は特に使いやすい作品です。